まるで内裏雛がそのまま立ち上がったかのような、優雅で気品ある姿が印象的な双体道祖神です。
二神はつぶらな瞳とすっと通った鼻筋を持ち、公家を思わせる衣冠束帯姿で表現されています。素朴な石仏とはひと味違う、繊細で洗練された造形が大きな特徴です。
寄り添った二神は、それぞれ内側の手を相手の肩へ回しています。男神の指が女神の肩にわずかに見えるのに対し、女神は男神の肩へ深く手をかけ、その指まではっきりと確認できます。もう一方の手も互いに握り合い、女神が男神の手をしっかりと包むような姿で刻まれています。
二人の顔は髪が触れ合うほど近く、頬を寄せ合っているようにも見えます。その表情にはどこかあどけなさが残り、少し伏し目がちな姿からは、若い二人の初々しさや恥じらいまで感じられます。
この道祖神は、高遠石工の熟練した職人による優れた作とされ、人物の表情や衣装、指先のしぐさに至るまで、その高い彫刻技術を見ることができます。
造形や構図、二神が醸し出す雰囲気は「筒井筒小坂」とよく似ており、同じ石工によって制作された可能性も指摘されています。
また、この道祖神の拓本はフランス、カナダ、アメリカにも渡り、海外でも紹介されてきました。
二神の表情だけでなく、肩に回した手や握り合う指先までじっくり眺めることで、石工の技術と豊かな人物表現をより深く味わうことのできる道祖神です。