男女二神が祝言を交わす場面を、優雅な姿で表現した双体道祖神です。
男神は烏帽子をかぶり、神官を思わせる装束で横向きに立っています。一方の女神は十二単衣をまとい、ひざまずいた姿で男神をじっと見つめています。
男神は右手を差し伸べ、女神を引き起こそうとするかのようにその手を握っています。女神は立ち膝になり、酒を注ぐための提子を持ち上げようとしています。二神のしぐさから、祝言の一場面を切り取ったような物語を感じることができます。
若々しく凛々しい男神に対し、女神は横向きの姿で、十二単衣の裾や長い髪が優美に表現されています。衣装の流れや髪形まで丁寧に彫り込まれ、二神の初々しい雰囲気を伝える繊細な造形も見どころです。
この道祖神が立つのは、清らかな唐沢川に沿って清水寺へ向かう丘陵地です。
唐沢川の水は、かつて地域の生活用水として利用されたほか、精米や製粉のための水車を動かす水としても、人々の暮らしを支えてきました。この道祖神も、そうした水の恵みへの感謝や地域の安泰を願って建立されたのではないかとも考えられています。
そして、この場所ならではのもうひとつの魅力が、道祖神の背後に広がる景色です。
美ヶ原高原や鉢伏山を背に、眼下には松本平を一望する雄大な風景が広がります。空と山々を背景に二神を眺めると、まるで道祖神が空に浮かんでいるかのようにも見えます。
繊細な祝言像と、山形村の丘陵地から望む開放的な風景。その両方を一緒に味わうことのできる道祖神です。