分厚い石碑の向かって右側に、二体の神が並んで刻まれた道祖神です。
石質が軟らかく彫りも浅いため、長い年月の中で風化が進み、現在では男女の区別がつかないほど輪郭が淡くなっています。その姿は、まるで石の中に浮かぶ「まぼろしの双像」のようにも見えます。
向かい合った二神は、互いに手を取り合っています。向かって右側の神は全体にたくましく、左側の神はしなやかな腰つきが印象的。肩から腰、裾へと続く優雅な線には、どこか浮世絵を思わせる美しさがあります。
細かな表情までは失われてしまったものの、寄り添う二人の姿からは、当時の人々の暮らしや人間らしい温かさを想像することができます。
二神が立つ台の下には、深く彫られた窪みがあります。この窪みには、かつてこの神様が好むとされた「あんころ餅」を押し込んで供えたと伝えられています。人々が道祖神を身近な存在として大切にしてきたことを感じさせる、興味深い言い伝えです。
また、基壇には2基の庚申塔がともに安置されています。
風化によって姿が薄れながらも、二神のしぐさや地域に伝わる風習を今に残す道祖神。石像そのものだけでなく、その周囲に受け継がれてきた人々の暮らしや信仰にも目を向けてみたい場所です。