珍しい双棟の中央に、男女二神の姿が半肉彫りで刻まれた道祖神です。
男神は衣冠束帯に太い表袴を身につけ、足元には浅沓を履いた姿。女神は桂袴に、長い髪を真後ろへ垂らして冠を戴く美しい装いで、二人の姿からは平安朝の雅やかな宮廷文化を思わせる雰囲気が感じられます。
この道祖神の大きな特徴は、二人の親密なしぐさと表情です。互いに体を寄せ合い、内側の手を相手の肩へ回して抱き、外側の手をしっかりと握り合っています。
手を握られた男神は、嬉しさを隠すかのように少しうつむき、女神も恥じらうように下を向いています。その姿はどこか初々しく、若い二人の微笑ましい一場面を見ているようです。
衣装の細かな表現をあえて省略し、全体を抽象化した造形も、ほかの筒井筒型の道祖神とは異なる特徴とされています。また、道祖神の左側には、二人を静かに見守るように一本の御柱が建てられています。
芦田英一著『道祖の神々』の表紙カバー写真に採用された際、この初々しい二人の姿を幼なじみに見立て、幼なじみの男女を題材とした物語を連想させる「筒井筒」と名付けられたと伝えられています。
石に刻まれた二人の表情や手の位置までじっくり眺めてみると、素朴な道祖神の中に込められた物語を感じることのできるスポットです。